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『湯を沸かすほどの熱い愛』

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昨夜Netflix宮沢りえさん主演の『湯を沸かすほどの熱い愛』を見たので、あらすじとともにいろいろと考えたことをメモ。

 

あらすじ

夫に蒸発された双葉(宮沢えり)は、16歳の娘安澄(杉咲花)を女手一つで育てていたが、あるときステージ4のがんを宣告される。余命2ヶ月という残された時間の中で、夫の失踪以降しばらく閉店状態だった銭湯を再開する。

 

杉咲花さんの若さ溢れる演技がよかった

杉咲花さんの演技は今まで見たことがなかったのですが、この映画で初めて見てすごく好感のもてる演技をする人だなという印象。

安澄は、学校では絵具をぐちゃぐちゃにされたり、制服を隠されたりと陰湿ないじめを受けるのです。それでも家では、明るい10代の女の子ということで思春期を迎えた女の子特有のひたむきさというかまっすぐさが顔にもよく表れていてよかったです。

涙をこらえるときの口の動きとか、見ているこちらがもらい泣きしそうでした。

 

演出はあんまり好きじゃない

一方で、演出はあまり好きではなかったです。

例えば、安澄が制服を隠された次の日、返してもらうために体操着を脱ぎ捨てる(!)というシーンがあるのですが、そのときに母親である双葉から言われた言葉がリフレインするのです。

漫画とかならわかるけど、映画でそういう行動の動機をわかりやすく説明してしまう手法を安易に使うのはあまり好きではないのです・・・。

あと、これは完全に個人の感想なのですが、いじめられている娘を無理やりに学校に行かせるというのは、ちょっと違うかなと。今、メンタルが弱っていて仕事から逃れたいと思っている自分にはちょっと辛かったです(笑)。

 

最後のシーンについての様々な憶測について(※ネタバレ)

最後のシーンについては、いろいろな憶測が飛び交っているようです。

双葉は死んでしまうのですが、遺体は銭湯に花と一緒に置かれるシーンをはさんだのちに、家族みんなで銭湯に入る→銭湯の煙突から赤い炎が出る→銭湯の火をくべる場所に双葉の遺体とおかれていた花びらが落ちている

というカットが流れます。

このシーンから実はこの映画はカルト映画であるという説があります。

 

・遺体を銭湯のお湯を温めるために燃やしたのではないか

・遺体をそのまま燃やすことは難しいから家族で遺体をバラバラにしたのではないか

・双葉が存命中も、夫はほとんど見舞いにもいかずにパチンコばかり行っていることから、そもそも夫は生命保険目当てで家に帰ってきたのではないか

 

確かに、最後のシークエンスはかなり意味深なつくりになっているため、そういう風に読み取ることもできそうです。

 

ただ、自分はカルト映画というようには見ませんでした。花びらが落ちていたのは、単純に遺体をかこっていた花をおそらく薪にくべたからであって、遺体を焼くというのはこの映画全体を貫く雰囲気からは想像しにくいです。双葉の遺体を特定の風呂釜に寝かせたまま、家族全員でお風呂に入ったというのがあのシーンではないかと。

また、赤い煙があがったのも、むしろ双葉の好きな色である赤い色とともに双葉が空に向かって天国に向かうというイメージだと感じました。

 

もちろん、事の真相は作り手にしかわからないですが、私はこの「湯を沸かすほどの熱い愛」は双葉が結集させたいびつな形の家族愛を描いてみせた映画だと思います。

個人的にはすごい好き!という映画ではないものの、宮沢えりさんや杉咲花さんという女優たちのひたむきな演技を楽しめました。