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『シカゴ7裁判』

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Netflixで「シカゴ7裁判」を楽しく見たので、簡単に感想を記載しておく。

あらすじ

1968年にシカゴで行われた民主党大会で、べトナム戦争の反戦運動の活動家たちが、デモを実行する。デモから半年後、デモ隊による暴動を引き起こした首謀者として7名の活動家(シカゴセブン)は起訴されてしまう。しかも、彼らは民主党政権下においては無罪とみなされているのに、政権交代後のニクソン政権下では見せしめのために共謀罪として立件されてしまう。

 

感想

まず、裁判が進むにつれ、裁判自体もさながら、担当判事のめちゃくちゃさに苛立ちを隠せなくなる。

今回のデモとは無関係であるブラックパンサー党のリーダーであるボビー・シールへの差別的言動がまあ、ひどい。アメリカの法廷という、建前でも差別には断固反対の立場をとるべき場所で、ボビーの反対尋問を全く認めず、おまけに法廷侮辱罪をちらつかせる。あまりのひどい対応に逆上したボビーが声を荒げると、「適切な対応をとれ」と命じ、手錠と猿ぐつわをかけてしまう。法廷の傍聴人、検事側もあまりの出来事に息をのむ。

シカゴセブン側もお互いのことを知らないわけで、共謀の事実など当然にないために、団結などせずお互いに好き勝手なことを言い合う。なかでも、ヒッピー風のアビーは、判事の言動を揶揄したり、反抗的な態度で判事のシカゴセブンへの心象がどんどん悪くなる。それでも、見ている側としては判事に対してむかつく気持ちが高まっているから、アビーの悪い態度をみると、「もっとやれー」という気持ちになるから不思議。

 

結果的に、実直な人権派弁護人であるクンスラーとワイングラスの働きと、シカゴセブンの団結によって、感動的な結末に向かって事態が大きく動き出す。最後の意外な結末には静かな感動とこの法廷劇を見届けたという充実感でいっぱいになる。

 

内容もさることながら、出ている俳優陣がよかった。

主人公(?)のトム・ヘイデン役には、エディ・レッドメイン。もう30歳を過ぎているのに大学生役にはまるとは。日本でいったら妻夫木くんみたいな感じでしょうか。

真面目すぎてちょっと空回りするところとか、役にぴったりでした。

 

さらに検事役には、ジョセフ・ゴードン・レヴィット。もともと、シニカルな役というか常に冷静でクールな役回りが多い印象。仕事ができる判事でいながら、判事のレイシストにはモノ申したり、シカゴセブンへの理不尽な仕打ちに対してはある程度同情心を抱いている感じが伝わってきました。

 

あと、シカゴ・セブン側に有利な証言をする前司法局長役にはマイケル・キートン。映画に出ている長さはちょっとだけだったけど、名優の存在によって画面がぐっと締まった印象。

 

ほかにも色々といいところがあったけど、やはり、実在の事件を題材にしていることから、実際のデモ隊更新やデモ隊と警察の衝突の映像が挟まれることによって、映画の真摯な姿勢が迫ってきた。アメリカで大統領選が間近に迫る中、この映画がアメリカで大ヒットした理由がわかった気がした。