桐島、会社やめるってよ

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『ユニクロ潜入一年』

ジャーナリストの横田増生さんが、ユニクロの販売現場の実態を知るために、ユニクロのアルバイトとして働いた経験と、実際の海外工場の現状を取材して得た情報をもとに書かれた本である。

 

冒頭はなぜ横田さんが、アルバイトとして働きはじめたかについて書かれる。

横田さんは2011年に出版された「ユニクロ帝国」がユニクロの名誉を棄損しているとして、出版差し止めの裁判をユニクロ側から起こされた(裁判の当事者は出版元の文藝春秋だが)。結果として裁判は文藝春秋側の勝訴となったものの、その後の決算報告会への取材拒否などがあり、横田さんはもっとユニクロの実情を調べたいと思い始める。

 

確かに、ニュースサイト等を見ると、柳井社長の敏腕ぷりとか、ユニクロの高品質低価格な製品に好感を寄せる記事ばかりで、例えばブラック企業である、とかの情報は個人のTwitterとかブログにあるばかりで、ブラック企業なのかホワイト企業なのかの実態が見えてこない感はある。

 

横田さんは、柳井社長のインタビュー記事で「ユニクロブラック企業ではない。悪口を言っているのは自分と会ったことがない人たちばかり。実際に会社見学をしてもらたり、社員やバイトとしてうちの会社で働いてもらってどういう企業なのかをぜひ体験してもらいたい」と言っているのを見かけ、渡りに船とばかりにアルバイトを始める。

 

その行動力がまずすごくて、潜入ものとしてのわくわく感がある。さらに、横田さんはどこか反権力的というか。企業からしたらたまったもんじゃないだろうけど、グレーなところをちくちくと詰めてくるような手法で、読んでいる側としては面白い。

 

私個人は、ユニクロはデニムとかインナーとかでお世話になっているけれど、不要なものは買わない、という姿勢である。低価格なのは企業努力もあるだろうけど、必ずどこかにそのしわ寄せが行っていると思っていて(特に実際に製造にかかわっている人たち)。だからこそ、不要な場合はそのループに自分が積極的に入り込まないようにしたいと思っている。倫理的な感覚もあるし、そしていつか自分もそちら側に取り込まれてしまうのではないか、みたいな感情もあるから。もちろんそれはユニクロだけでなくて、プチプラと言われるすべての洋服に当てはめている・・・。