桐島、会社やめるってよ

読んだ本や見た映画についてのアレコレ

最近読んだ本(4月その1)

昨日、ブログを書いたら、最近読んだけどメモしていなかった本を思い出したので書く。選ぶ本はそのときの心境を表すというか。最近は、会社を辞めることへの一抹の不安を感じているのだろうか、日本でいわゆる「普通の生活」を送っておらず、肩の力を抜きながらも力強く生きるアウトローたちの本を無意識に選んでいた。

 

①「間違う力」高野秀行

最近はやり(?)の「〇〇力」系の本だが、これはハウツーというより、ノンフィクション作家の高野さんがどのようなモットーでノンフィクション作家として生きてきたかということが垣間見える本。高野さんの著作を好きで読んできた読者にとっては楽しい本だと思われる。

高野秀行さんのことを知らない人のために、うろ覚えだが、彼の経歴を簡単に書いておく。早稲田大学の冒険部出身で、冒険部の活動で当時は海外に開かれていなかったコンゴに行き、そのときの経験を書いた「幻獣ムベンベを追え」で作家デビュー。その後、大学卒業後にタイの大学で日本語を教えたり、アヘンの栽培地帯に潜入して栽培を体験しちゃったり、超危険地帯と言われその実態が不明だったソマリアに行ったりと、辺境に出かけて行っては貴重な知見を日本の読者に紹介してくれる稀有な存在である。

私はその高野さんの刺激的な冒険譚と、ギャップのあるゆるい文体が好きで、図書館で本を見かけるたびに読んできた隠れファンだということに最近気が付いた。今後も、新しい本を読み進めてここではない辺境に思いを寄せてみたい。

 

②「ひきこもらない」pha

京大卒、元日本一有名なニートとして名をはせるphaさんの本。著者は、25歳で京都大学を卒業し、その後会社員として働いていたが、毎日同じ時間に起きて出社、仕事をするという生活に限界を感じ退職。その後は、ブロガーや執筆家として活躍している。基本的には、シェアハウスに住み、コストを下げながら生活している模様。最初、肩書を見たときには、なんか胡散臭いなあと思っていたのだけど、本をめくってみたらむしろ「わかる・・・」という共感ポイントがたくさんあった。

 

phaさんは自らを小説「コンビニ人間」の主人公と少しだけ重ねている。コンビニ人間の主人公は、コンビニのマニュアル通りに生活することで社会の一部となれていることを実感する女性。現代社会の「あるべき」姿からは早々に脱落している存在。私もそこまでではないけれど、すぐに会社を辞めたくなるし、会社で求められているようなコミュニケーションは苦手だし、という感じ。人間性にはグラデーションがあると思うし、誰もが会社に毎日行けるわけではなくて、でもそういう人も包括していくのが社会の姿なのだと思う。私の尊敬する内田樹さんも「強い社会は多様性のある社会で、常にメインカルチャーカウンターカルチャーがある。強いカウンターカルチャーを有するアメリカは、ベトナム戦争で国の威信が潰えそうになったときも、実は一番強い反対運動をしていた国内勢力があったから、その後すぐに国力を回復した。つまりは同じ方を向かせるのではなく、みんな好き勝手やりましょうよ、という姿勢が社会には大事」みたいなことを言っていて、そうだようなと思った。

日本社会は「大人はこうあるべき」みたいな風潮が強いような気がするけど、そうではない生き方をしてもいいのだという思いを新たにした。