桐島、会社やめるってよ

読んだ本や見た映画についてのアレコレ

最近読んだ本(4月後半)

最近はまた読書欲が高まってきたので、図書館にいってもいい本が見つかる。

 

①『謎のアジア納豆:そして帰ってきた<日本納豆>』高野秀行

我々日本人は、よく外国から来た人に対して、にやにやしながら納豆を食べさせ、「味はうまいけど、臭い」とかしかめつらでいうリアクションを見るのが好きである。納豆といえば、日本が世界に誇る唯一無二の伝統食品だと思われがちである。しかし、なんと、アジア各地、とくに辺境の地域において日常的に納豆が食べられているのだった・・・。たまたま取材旅行で訪れた先で、納豆に出会った高野さんは、どういう地域に納豆があるのか、納豆がつくられるようになった背景、はたまた我々日本人が食べている納豆とはなんなのか・・・あらゆる方面から柔軟な思考と行動力で思考する。その過程がめちゃくちゃ面白い。常識だと思われていた事象がそうではないと知るときの目の前が開く感じ、それが読書の醍醐味だと感じる。

 

②『ミャンマーの柳生一族』高野秀行

出たー。また高野さんの本。最近は図書館に行くたびに、高野さんの本を自然と見つけることができる特殊能力が身についているような気がする。ちなみに、高野さんの本は(あくまで、私がよくいく図書館の場合だけど)置かれているジャンルがばらばらなのも面白い。上で紹介した『謎のアジア納豆・・・』は食文化の場所にあったし、本書はアジアの歴史コーナーだった。最近はミャンマー民主化デモが激化しているけれど、この本が書かれたのは2006年なので、今とは違うけれど、この本を読むと「さもありなん・・・」というか。この本は、高野さんが大学時代に所属していた探検部の先輩で小説家の船戸与一と2人でミャンマーに取材旅行に出かける。しかし、ミャンマーは軍部が政権を担う国で、しかも2人の取材に対し監視役を送り込む。次第にその政権のなりたちや諜報員を使う方法などが、実はミャンマーという国は、日本の江戸時代のような武家社会なのでは?という考えに行きつく。そして、諜報員はその性質が江戸時代に暗躍した柳生一族のようであると・・・。道中のドタバタ具合はあまりにコミカルで、もともとは監視役と取材者という関係が同士のような関係性になっていくのも面白い。

 

 

③『一神教と国家 イスラームキリスト教ユダヤ教内田樹中田考

期待を裏切らない内田先生の本。内田先生の本の面白いところは、ページをめくるたびに、知的好奇心が高まっていくこと。世界で起きていることを独特の視点から掘り下げる。また、対談形式の本だと、相手の返答に応じてその思考の鋭さが増していくようで面白い。この本では自身もムスリムイスラーム学者の中田先生との対談。面白いのは2人の主張が一見すると正反対のようでありながら、相違や一致点を見つけて、お互いの意見がより分かりやすく展開されていく。よく一神教多神教を比較して、多神教の方が柔軟で優しい宗教であるという意見がある。一神教の戒律の厳しさというのは、生身の身体に即した宗教であるから、というところがすごく府に落ちた。一神教が根付いた地域はもともと砂漠の民、もっといえば遊牧民であったため、一人では生きていけない。だからこそ民族的・宗教的ネットワークが強固になる。喜捨や寄付が当たり前で共生がデフォルトになる。その上で、厳しい環境を生き抜くために、厳しい戒律やルールが生まれていく。ほかにも書ききれないけど、今のイスラームの課題を知ることができたとともに、グローバリゼーションに抵抗するためのイスラームという構造が面白かった。機会があれば再読したい。