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『なぜ君は総理大臣になれないのか』

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17年前、官僚だった小川淳也は政治家を志し地元の香川一区から衆議院選挙に立候補する。美容室を経営する両親のもと生まれた彼には地盤も看板もないままに孤軍奮闘する。同じ香川一区には、三世議員で親族は四国新聞のオーナーという自民党平井卓也の協力な地盤があり、小川淳也小選挙区ではなかなか勝つことができない。小選挙区で勝てないということは、所属する党内での発言力も弱いということを意味する。

2005年に比例復活により初当選を果たす。政治家になって国民の生活をよりよくする、という使命のもと闘い続ける彼を17年にわたって追い続けるドキュメンタリーだが、年数を重ねていくうちに、皮肉なことになぜ彼が総理大臣になれないのかということが明らかになっていく。

 

小川さんといえば、数年前の統計不正問題が発覚したときの政府への質疑での精悍な態度で有名になった人である。民進党の前原氏の側近であったために、希望の党への合流問題(小池さんが、「排除します」といったやつ)においては、自分の信念と仁義のはざまで苦悩する姿が見られる。彼がなぜ総理大臣になれないのか、という答えは「あまりにまっすぐすぎる。そして、政治家としてうまく立ち回るということを知らない」ということなんだろうと思う。見ている一視聴者としては、こういう人にこそ総理大臣になってほしいという気持ちを新たにするのに、同時にこれでは総理大臣はおろか、党首のポストも遠いように感じてしまう、という歯がゆさでいっぱいになる。

 

あるべき民主主義の姿とは、彼がいう「多数決で51対49で何かが決まったとしたら、政権は49に対して誠実でなければならない」ということだと思う。しかし、今の世界はそうではない。自民党政治、とくに第二次安倍政権があれだけの疑惑をもたれながらも長期政権を維持できたのは、結局自分の支持者だけに目を向けたがゆえに、リベラル層には無力感を抱かせた結果、多数の支持なし層を生み出した。多くない自民党支持者の支持を集めることで多くの議席を獲得し、議席数だけでは大勝したかの印象を与えることに成功したことに起因する。小選挙区制のひずみは明らかだ。

 

こういう人が政治家をやってくれていることに感謝を抱くと同時に、政治の闇を見てしまったようで複雑な気持ちになった。