桐島、会社やめるってよ

読んだ本や見た映画についてのアレコレ

『ザ、コラム』

www.amazon.co.jp

 

在宅勤務が始まってからというものの、TBSラジオを流しながら仕事をすることがある。TBSラジオの中で一番気に入っているのは、赤江珠緒さんがメインのたまむすびだが、中でも小田嶋隆さんがゲストで出演される月曜日の「週刊日本の空気」を好んで聞いている。

小田嶋隆さんといえば、Twitterでは絡んでくるクソリパー(匿名でクソリプをしてくる人)に対して、返事をする数少ない大人であるが、小田嶋さんがクソリパーを瞬時に黙らせる秀逸すぎるリプにはこんなものがある。

 

クソリパー:よくこんな原稿で金を稼いでるよな

小田嶋さん:ライターなんてチョロくて楽な仕事ですよ。あなたもやられたらいかがですか?

 

こんな舌鋒鋭い小田嶋さんのTwitterやコラムを読んでいると、激しい性格を想像してしまうのだが、実際にラジオ等で話しているときは大変物腰が柔らかく、そのギャップに大変驚いた(私は映画評論家の町山智弘さんの書籍やTwitterもよく見ているが、町山さんは発言も過激なことが多く、いい意味で期待を裏切らない)。

 

ザ・コラムは2006年から2014年までに各媒体に掲載された小田嶋さんのコラムの中から、小田嶋さんが自分でセレクトした、いわばベストアルバム的なコラム集である。

 

中でも私が秀逸だと思ったのは『「アベノミクス」の勝利』というコラムだ。

安倍首相の掲げる経済政策「アベノミクス」をメディアがこぞって使った結果、経済政策の中身を隠蔽し、メディアが政権の御用聞きに成り下がったことを意味するという。

 

先日安倍首相が辞任を表明したが、振り返ってみれば長期政権下ではあらゆる事象が耳障りの良い「キーワード」でラップされたまま中身がわからないちゃちいプレゼントとして国民にパスされていた。「美しい国」に始まり、「アベノミクス」の果てに私の手元に残ったのは「アベノマスク」だった。ポスト安倍争いは菅さんの出来レースになり果てているが、メディアはいまだに総裁選の立候補者に「アベノミクスは何点だったと思われますか?」などと聞いて、安倍政権の手先として機能し続けているようである。

 

なーんて、何かよさげなことを言おうとしても、私の頭からひねり出される言葉は、手垢のついた使い古された言い回しでしかないのがつらい。

小田嶋さんへのクソリプがやまないのも、私もほかの人も自分の中のもやもやを他人に伝える技がないからではないかと思う。

コラムニストは決して楽でも簡単な仕事でもなさそうです、小田嶋さん。