桐島、会社やめるってよ

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『バーニング』

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3時間近く、ずっと不穏な影がつきまってくる映画でした。最後の10分の展開に関しては、見る人によっていろいろな解釈ができそうで、見た人同士で話し合ったら楽しそう。いくつか考えたことがあったので忘れないうちに記したい。

 

あらすじ

小説家志望のジョンスは、幼馴染のヘミと再会する。アフリカへの旅行から帰国したヘミを空港へ迎えに行くが、ヘミはお金持ちの青年ベンと一緒だった。ある時、ふとした瞬間にジョンスはベンからビニールハウスを燃やすことが趣味であると伝えられ、それと並行するように、ヘミの行方がわからなくなる。

 

 

3人の役者の演技がすごい

まず、ジョンスは、持たざる者としての存在感がすごい。ベンの乗った車(ポルシェ)を見て、自分のトラックにヘミを乗せるのがためらわれた結果、ヘミに「送ってもらいなよ」といってしまうところとか、食事をおごってもらう時の自分を卑下するような態度。世界は謎だらけで、何を書いたらいいのかわからない、というジョンスの言葉は真に迫る。持たざる者が、複雑すぎる世の中に放り込まれて、自分が今まで生きてきた世界の足元がぐらんぐらんに揺れて崩れ、飲み込まれそうになる感覚。

 

ヘミは、自由きままな姿と、はかなげな姿の対比がすごい。存在感があるのに、それでいて生命観の薄い感じのバランスが立ち姿や顔立ちにあふれている。

 

ベンは、軽薄さを感じる一方でただの善良な人、というようにも見える。ベンのこの不自然な存在が、物語を二重にも三重にも深くさせている感じ。ベンを演じたスティーブン・ユアンは韓国系アメリカ人で、韓国語はネイティブではないそう。聞く人が聞けばわかるちょっと違和感のある韓国語がその得体の知れなさを足している感じ。

 

エンディングの解釈について(ネタバレ)

ジョンスがヘミの部屋で小説を書いている描写ののち、突然場面が変わり、ベンとジョンスが対峙するシーンに。ジョンスはなんと、持っていたナイフでベンを刺殺・・・・!

ベンがヘミを殺害したかどうかは結局最後まで誰も分からない(決定的な証拠もない)。一方で、ジョンスがベンを刺したシーン、あれは現実のことではないように感じた。あの刺殺の場面は、ヘミを見つけることができないジョンスの一つの逃避行として思いついたこと、想像上のストーリーというように感じた。