桐島、会社やめるってよ

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『モキシ―~私たちのムーブメント~』

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16歳のヴィヴィアンは、シャイでおとなしい女の子だが、学校の性差別や不平等に憤りを感じていた。若い時にフェミニズム運動をしていた母の影響や、男子生徒からの嫌がらせに毅然と対応する転校生のルーシーの姿を目の当たりにしたヴィヴィアンは匿名でモキシ―という冊子をつくり学校内で女子生徒の立場改善のムーブメントを起こす。彼女がたった一人で始めた運動がしだいに大きなうねりを引き起こし・・・。という話。

 

昨今のMe too運動を一学校内で描いたような話で、学園ものの明るさとか、思春期の友人との関係、恋愛模様など全部楽しい作品。ヴィヴィアンが通う学園も、人種の多様性がバランスとれていて、しかもヴィヴィアンと恋仲になるイケてる彼はアジア系というアップデートされた価値観が見ていてとても心地いい。

 

つっこむとしたら、ヴィヴィアンの恋人になるセス役の俳優は日本人とアメリカ人のハーフ、つまりアジア系なのに、役名がセス・アコスタという点。セス・アコスタって、むしろラテン系なのでは?と思ったけどまあいいか。

セス役のニコ・ヒラガさんは、ヒラガという名前からもわかるようにお父さんが日本人で、顔もアジア系でいってみれば鈴木福くんみたいなやさしーい感じなのだけど、役のキャラクターがいいからか、異常にカッコよく見えるという不思議。映画全般を通して彼の性格がイケメンすぎて、久々に映画を見ていて動悸がしました。やっぱり人間は顔じゃなくて、性格とか雰囲気が大事・・・。

 

あと、ヴィヴィアンの親友を演じた中国系の女の子クラウディアはテラスハウスハワイ編のローレンが演じている。すごい出世・・・。優等生でシャイだけど、友達思いで芯がある役どころがはまってました。

 

この映画を語るうえで、フェミニズム運動は避けて通れないと思うので、うまくかけるかわからないけど、書いてみる。

ヴィヴィアンの行動は当初は「モキシ―」という冊子での啓蒙のみだったけれど、次第に、アメフト部のミッチェルを"Asshole"と称したりとか、不平等に目をつぶる校長のトロフィーを盗んだり、さらにはそのトロフィーを壊したりとエスカレートしてしまう。

その点が「けしからん」として批判する人も結構いるんだろうと思う。確かに、何かの正しい主張をする際には、適切なルールにのっとってかつ他人に迷惑をかけないで行うべき、っていう考えの人はすごく多いと感じていて。それだから、そのルールから逸脱する行動を起こす人に冷たい目を向けてしまうのは、特に日本人にありがちな行動だと思う。だけど、凝り固まった古いスタンダードを壊して新たな価値観にアップデートしていくというのは非常に強いパワーがいると思っていて、もし私が当事者だとしたら、今まで聞いてもらえなかったメッセージを伝えるためには、あのくらいの力強い行動に出てしまうのも十分に理解できると思った。史実において、例えば黒人の奴隷解放運動とか女性の立場向上運動とかも、一時は過激化したこともあっただろうけど、それだけのうねりを起こすパワーが必要があったという意味で、一部の過激化は致し方ないのではないかと思う。それ以上に、古くてあきらかに不平等な価値観に目をつぶっていることの方がよっぽど悪なのかも。

 

まあ、うまくまとまらなかったけど、色々考えさせられるとともに、学園ものアレコレを楽しめる映画でした。あと、しつこいけどセスがかっこよすぎです。