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『サバイバルファミリー』

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あらすじ

ウォーターボーイズ』や『ハッピーフライト』などの矢口史靖監督が、突然世の中から電気が消えた日本を力強く生き抜く家族を描いたコメディ作。

東京に住む鈴木家は、ある朝、すべての電気が止まっていることに気づく(電気だけじゃなくて、時計の電池が止まっているとか、車が止まってしまうなどの設定に突っ込みどころがある点はちょっとおいておく)。”日本の西に向かえば電気は生きているらしい”という眉唾ものの情報をもとに、一家は自転車で大阪を目指す。

 

感想

サバイバル生活と聞くとなぜか胸が躍る私。しかし、その気持ちはおそらく私だけのものではあるまい。私が小学生時代のときには無人島で生活するテレビ番組もあったし、1ヶ月1万円生活で一番人気だったのはたぶん銛で魚をゲットする濱口だろうし、古くは『無人島に生きる16人』なんていうクラシックもある。自らの身一つで生き延びるたくましい人間にはいつだって称賛が送られる。特に、サバイバル能力がとんでもなく落ちた現代においては。

 

サバイバル生活をどう家族が生き延びるか、という観点だけでも普通に楽しいのだが、反抗期で常に不満な娘、家族とのコミュニケーションをできるだけ回避する息子、頼りないのに世間体を気にする夫等、ばらばらになった家族が極限の環境下において結集するというのは当たり前すぎるのだけど面白い。特に小日向文世演じるさえない父親は、日常時は周りにはバレバレのカツラを災害時でも必死で守り続けるが、終盤のある場面で、そのカツラを投げ捨てる。その演出が笑いを誘う一方で、なぜかしみじみとも感じる不思議。

 

鈴木家が道中に出会う意識高い系ファミリー(キャスティングが意識高めなのも面白い)は常に同じ方向を向いて仲が良いのだけど、同質性が高すぎて若干の気持ち悪さを感じるし、その感覚は作り手の意思通りのものだと思う。

数か月前にNetflixで公開されたアニメ作品『日本沈没2020』は、同じサバイバル系でもさらにえげつない内容で、登場人物は善悪によらずにバッタバッタと死んでいく。同じサバイバル系であっても『サバイバルファミリー』ははるかに柔和でコメディタッチなファミリームービーであることは間違いない。

 

これを見ると備蓄品を準備しなきゃ、とか普段から健康には気を使わなきゃ、とか災害時に家族とどう連絡を取り合うか話し合っておこう、とか一時的におものだけど、すぐにそんな切羽詰まった気持ちは忘れてしまう。

1995年には阪神大震災、2011年には東日本大震災。幸運にして自分はいずれも比較的離れた場所にいて他人事のように感じていたが、災害はすぐそこにあるということを常に頭の片隅に置いておかなければなあ、と改めて思った。