桐島、会社やめるってよ

読んだ本や見た映画についてのアレコレ

『小田嶋隆のコラム道』

小田嶋隆のコラム道』というのは不思議な本で、ハウツー本のような見かけをしているが決してそんな簡単な本ではない。ワイドショーの紋切り型な切り口とは距離を置いて、世の中の出来事をいかに多面的に見て、自分の頭の中で創造し、描写するかについて語った本である(と思っているのだけど、違うかもしれない)。

 

とはいえ、皮肉な話ではあるが、私が一番グッと来たポイントは、具体的な方法論の箇所であった。やはり文章の初心者はそもそも文章を書くという作業を前にして呆然として立ち尽くす。何か書きたいと思っていても、頭に文章が浮かんでこない。私がブログを何年も書き続けることができないのは、頭の中に去来するアイディアが出てこないことも一つではあるが、それ以上に「何か感じてはいるのだけれど、それを表現することができない」という赤子状態にあるからだと思う。

 

小田嶋さん曰く、文章を書く作業は「創造」と「描写」に分類でき、「描写」に関して言えば訓練でレベルアップできるらしい。一番てっとり早い方法は、本や映画等の既にある内容を一定の文字量を自分で設定して書き起こすという作業だという。一方で「創造」はどうにもならない部分でもあるが、一つ面白いと思ったのは記憶の混濁は、ある意味でオリジナリティーである、という点。若いころの読書が年齢を重ねてその記憶が変容していく過程が筆者にオリジナリティの養分を与えるというのは膝をうつような感覚だった。