『浮草』
Netflixで小津安二郎の新しい映画が見れるようになっていたので、さっそく鑑賞。
2020/11/10時点でNetflix上で見れる小津監督の映画は以下の3本。うち、秋刀魚の味と浮草はデジタルリマスター版なので、カラーで見ることができる。
・東京物語(1953年)
・秋刀魚の味 (1962年)
・浮草(1959年)
ざっくりと浮草のあらすじを書いておくと、駒十郎率いる旅の一座が志摩半島のある島に到着する。そこでは、駒十郎のかつての恋人であるお芳と当時設けた息子の清が住んでおり、12年ぶりの再会を果たす。駒十郎には、旅の一座に連れ合いの役者すみ子がおり、すみ子は駒十郎とお芳の関係を疑い・・・という話。
小津安二郎の映画には、一つ一つのカットがゆっくりなので、出てくる俳優の顔を真正面からじっくり見ることになる。そのため、各俳優のたたずまいみたいなものに自然と注目が行く。本作でも見知った俳優が数多く登場するが、一番驚いたのは、お芳役の杉村春子。東京物語では、現実的でちょっと嫌な役だったが、この映画では険のない優しい母親であった。
清役の人はよく知らなかったのですが、調べてみたら川口浩だった・・・!今や、「川口浩探検隊」とかいってバラエティでネタにされているけど、若いころはこんなにシュッとしていたんですね。
でもやはり、本作で一番華があったのは主役の中村 鴈治郎と京マチ子。どちらも根拠のある目力というか、すごく存在感があった。
この映画は何について描いているのか、と問われると家族と人情なのかと答えるけれど、その実よくわからない。
だけど終盤の駒十郎が家族との口論の末、旅に出る場面では不思議な感動があった。次に駒十郎が志摩半島に帰ってくるときには、清が彼を父親として愛情をもって接する、という幸福な未来を視聴者側が心の内で描いているからだろうか。