桐島、会社やめるってよ

読んだ本や見た映画についてのアレコレ

『反応しない練習』

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一冊一冊の本との出会いに異なる思い出がある。

私は普段、近所のこじんまりした図書館で本を選ぶことが多い。

 

近所の図書館は地下1階の陽が全くあたらないせまい場所にある。

しかし天井まで続く本棚が所せましにずらっと並ぶ感じは壮観であり、また本に包まれて他人からの視線に入りにくいというのも結構気に入っている。

バリアフリーの観点からはいくらか難点があるのかもしれないが税金を払っている一住民からしたら大変ありがたい存在である。

 

という図書館への愛を語った後にやぼではあるが、この本との出会いは図書館ではない。そういえば、あのときは夏の暑い日で、むわっとする熱波から逃れるようにして入った本屋だった。なんとなく手にとった日経ビジネスウーマンの特集は「鬱ぬけレッスン」。

 

内容はいかに気持ちをリフレッシュしているかのアンケートとかキャリア女性の人生を折れ線グラフで示し、過去のつらい時期を振り返るインタビューなどあたりさわりない内容であった。

しかし最後の数ページでおすすめ本が紹介されており、そこで目に入ったのがこの『反応しない練習』だった。

 

『反応しない練習』はブッダの教えを現代の我々の生活にいかに適応し苦しみのない人生を生きるための方策を具体的にかつ分かりやすく教えてくれる本だ。

いわゆる宗教本ではなく、より実践的でプラクティカルな性格が強い。

 

ことあるごとに読み返しているが、常に何かに絶望して倒れたままでいる私にとっては差し伸べられた手である。

自分の人生の目的は何なのかと煩悶していた。しかし、作者は言う。

「苦しみのない人生を歩むことが人生の目的なのだ」と。

また、苦しみが人生の中から生まれてくるのなら、いかなる苦しみであっても消し去ることができる。

こんな風に確信をもって言い切ってくれる人はいなかったと思う。

しかも、どんな人にでも実践できる方法で。

 

私の苦しみは、他人に認められたいという承認欲求と『自分にはできない』という自信のなさ、過去のうつの経験を忘れられないことからきている。しかしこれらの感情はすべて目の前で実際に起きていることではなく、自分の心が作り出す妄想にすぎない。

 

原因不明な焦燥感やつらさに襲われたときは、目をそっと閉じて呼吸による腹のふくらみや縮みに集中し、『自分は自分を肯定する』と自分に伝える。目を再度開いた時には、実際にその苦しみが面前には実在しないものだと実感する。

 

この繰り返しで苦しみは次第に自分の中から離れていく。

 

また、手持ち無沙汰のときにスマホに手が伸びるのは、今ここに集中できていないから。そこでも一度深呼吸し、自分が集中できていないことを「理解する」。それだけで少しずつ人生が変わる。そういう風に確信した。

 

この本との出会いは偶然だが、この出会いに感謝したい。

将来振り返ったときに、人生を好転させた本の一つに数えるのはきっとこの本だと思う。