桐島、会社やめるってよ

読んだ本や見た映画についてのアレコレ

『パラサイト 半地下の家族』

最近のブログ更新頻度の著しい低下からわかるように、いつものようにブログを書くことが次第におろそかになってきている・・・。面倒くさいな、という気持ちを押し殺して、今日も頑張って書きます。

 

パラサイト 半地下の家族といえば、アジア映画初の作品賞をとっただけあって、その内容は折り紙付き。日本でも、先日ノーカット版が金曜ロードショーで放映された。ハリウッドの映画界も多様性をとりいれる動きが急速に進んでいるとはいえ、外国語映画賞ではなくて作品賞をとったことのインパクトは非常に大きいけれど、それもこの映画が描いている恐怖や笑えるポイントが世界共通となってきているのだろう、と思う。

 

この映画で一番フォーカスされているのは、なんといっても格差のすさまじさと、貧富が作り出す人間性の滑稽さというか。例えば、セレブ家族の奥さんは、貧しさのリアルを感じることなく生きているから、いい意味で性格にねじ曲がったところがない感じで、怪しげなパラサイト家族の言うことを素直に信じてしまう。それでも、やはり人を使う側の傲慢さというか、お金で様々な問題を解決してしまう酷さに気づくことがない。一方で、パラサイトする側の家族は、まあ生きることの困難さが日常を支配しているからこそ、人を欺いたり出し抜くことに罪悪感を抱くことがない。自分たちが犯したことの重大さに気づくのは、まさに命の危機がさしせまったその時だけとなってしまう。

キャラクター造形が究極に練りこまれて、そしてその滑稽さを体現した俳優陣の演技も素晴らしかったけど、やはり二つの家族の家の造形というのが非常に面白かった。パラサイトする家族の半地下の家、というのは、実際に北との戦闘を考慮にいれて作られた建物らしい。北との緊張関係という意味合いは、セレブ家族の大邸宅の「例のあの部屋」にも通じるものであり、韓国社会に内在する北との問題というのが色濃く反映されている。

 

あと、韓国映画やドラマを最近よく見て思うのは、韓国語の音のインパクトである。ちょっとだけ韓国語を勉強して思ったのは、韓国語には「ッパ」とか「ッカ」みたいな破裂音がたくさんあって、そういう意味では肺活量が必要になる英語の発音と似たものを感じる。そういう意味で、感情が爆発するシーンのダイナミックさとかはすごいし、キャラクターたちが内面の怒り等を言葉で表現してもあまり違和感を感じないというか。

一方で、日本語は破裂音は結構すくなくて、抑揚も小さいから、評価されるのは小津映画とか、以前アカデミー賞外国語賞をとった「おくりびと」みたいな静かで情緒を楽しむみたいな映画が評価されるのかな、なんてそんなことを思った。