桐島、会社やめるってよ

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『人生は攻略できる 』

著者の橘玲さんの本に初めて出会ったのは確か社会人2年目。

当時、『タックス・ヘイブン』とか『マネーロンダリング』といった小説が出ていて、国際金融の枠組みの中で、違反にはぎりぎりならない手法を駆使して、富裕層の節税やマネーロンダリングの指導をするコンサルタントの男が主人公だ(ったと思う)。

国際金融小説という目新しい小説ジャンルで、面白く読んだ。

 

その後、小説だけではなく、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』や『専業主婦は2億円損をする』など、投資や経済に関するノンフィクションも書いている。

この『人生は攻略できる』は、他の本と比べて平易な文章で、かつ若い人たちに向けて、この不確実な世の中をうまく生きていくかということを書いている。

 

筆者に言わせると、「人生を攻略する」とは、まあ、幸福になることを目指すと同義。それでは幸福になるとは何かというと、次の2つだという。

 

①好きなことを夢中でやって、いまが楽しい=やりがい、生きがいがある

②あとから振り返って「幸福だった」といえる

 

この①②を可能にするにはそもそも人生の土台である①お金②仕事③愛情・社会が肝要だという。どれもまんべんなく有している人はあまりいないだろうけど、お金に不安がなくて、仕事にやりがいを感じ、それでいて友人やパートナーに恵まれることで、幸福に感じやすくなる、というまあ、そこまではわかる。

 

1つ面白いことは、「もともと貧しかったけど、自分の力でお金持ちになった人」の方が、「もともとお金持ちで、その富を維持した人」が幸福度を感じやすいという。

さらに、どんな幸せでも永続することはなく、高価なバッグを買って、気分が高揚しても翌年にはそこまで嬉しさを感じないのと一緒だ。

それよりも、少し苦しいときに、「これから少しずつ状況がよくなる」と思いながら、少しずつ幸せになっていくのが一番幸福度を感じるという。

 

年収にしても800万が最も幸せ説というのがあり、800万円になるまでは比例的に幸福度が上がっていくけれど、800万を超えてしまうと、同じ100万の給料アップで感じる幸せの増分は少なくなっていくという。

 

だから、今、私はちょっと仕事面でしんどいな、とか思っているけど、少しずつ嫌なことにも慣れてなんとかやれるな、と自分を認められていく過程で少しずつ楽に、むしろ幸福を感じていくのではないかと信じたい。

 

書かれていることは、「まあ、そんなもんか」という感じで、大きな気づきはないんだけど、そっと自分の背中を押してくれるような、そんな本だった。