桐島、会社やめるってよ

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『イエスタデイ』

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売れないソングライターであるジャックは、出演したフェスの帰り道で交通事故にあってしまう。病院で目が覚めると、まさかのそこはビートルズが存在しない世界で、ジャックはビートルズの名曲を弾くことで次第にスターの階段をのぼるが・・・という話。

 

私は1991年生まれなので、当然にビートルズが登場したときの世界の雰囲気を知らない。それでも、ビートルズのアルバムは家族が持っていたのを聴いていたし、口ずさむことができる。さらに言えばビートルズの出現は、その音楽性が深く愛され世界中で模倣されただけではなく、現代に連なる1960年のカウンターカルチャーの走りとしてその影響はあまりに大きい。この映画の中では、ビートルズが存在しないので、もろに影響を受けたロックバンドのオアシスがいない。さらにユニークなのは、コカ・コーラハリーポッター、たばこまでもない・・・!これはビートルズが影響を与えた、というよりかは、まあ、今の実際に自分が見ている世界から一定の文化というのが抜け落ちた世界を体現している、ということなのだと思われる。

 

この映画でまず笑ってしまったポイントとして本人役で出ているエド・シーラン。

エド・シーランって、「ゲーム・オブ・スローンズ」とか「ブリジット・ジョーンズ」とかでも音楽家役あるいは本人役として出ているけど、結構出たがりなんだろうか。

エドは今の世界と同じように、売れっ子ソングライターとしてブイブイ言わせているが、ひょんなことから、ジャックの歌(もちろんビートルズの曲)を聴く。その後、エドのコンサートの前座でジャックがビートルズの曲を歌うようになる。コンサート後、エドがジャックに10分間でいい曲を作る勝負をしよう、と持ち掛ける。エドは「お決まりのエド・シーランっぽい」曲をつくるが、ジャックはビートルズの「The Long And Winding Road」をしっとりと歌い上げ、エド・シーランがその曲の美しさにショックを受ける・・・というシーンが笑える。

 

完全に余談ですが、エド・シーランの曲の中では「Photograph」が好きです。

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 ジャックはインド系のイギリス人ということで、インド移民が多い現代のイギリス社会を反映している。また、ビートルズインド音楽のエッセンスをいち早く取れていたからすごく面白い配役だと思う。しかし、この映画では、あくまでビートルズの楽曲的な素晴らしさだけがフォーカスされており、人々が熱狂するのはその音楽的な価値だけである。実際に彼らが社会に残したインパクトと比較すると、その素晴らしさが矮小な形で表れてしまっているのは少し残念だったかもしれない。とはいえ、ビートルズの名曲を楽しめる上に、かわいいラブコメ的な要素もある本作、とても楽しい一作だった。

 

ちなみに、ヒロインのリリー・ジェイムズは、ベイビー・ドライバーとかマンマ・ミーアの続編に出ているように、音楽にまつわるイギリス映画にひっぱりだこな印象。ハリウッド女優とはまた違うちょっと素朴でいながら、キュートな雰囲気がとても好き。